文字情報メインのネット販売 より丁寧な表現で感覚のズレによるトラブルを防ごう!

以前であれば対面販売しかしなかった商品も、ネット上で販売が完結し、一度も相手の顔を見ず、一度も話すことなく出荷も完了してしまう時代。それだけ商品説明等の文字情報が重要であり、それが足らずにトラブルになるケースも多い。また、双方の認識のズレが原因になっていることもあり、より丁寧な表現が必要になってきている。

1.ネット販売は「当たり前」だが、思わぬトラブルも

今やEC(エレクトリック・コマース)と呼ばれる電子商取引は当たり前。実店舗販売に加えインターネット販売も併用したり、または、ネット専門で展開している方もいることだろう。商材はもちろんバイク、パーツ、用品がメインのはず。これらをBBBをはじめとした中古バイクサイト、ネットオークション、ショッピングモール、独自のネットショップ、ドロップシッピング、BtoBサイト等々で販売するのが主流であり、ほぼこのどれかに当てはまるのではないだろうか。それぞれにメリット、デメリット、問題点があり、それを踏まえた上で上手く活用すれば、これほど有効な販売ツールはない。しかし、ネット販売の理解度が低いままでいると、対面販売ではなく文字や画像のみでのやり取りということもあり、ユーザーとの思わぬトラブルに発展する可能性もある。

2.国民生活センターのHPを参照に

定期的にユーザートラブル事例を掲載してきたので、バックナンバーを参照していただいた上で、国民生活センターのホームページ(http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html)には、様々な「相談事例と解決結果」があり、ネット販売についてもいくつか掲載されている。もちろん消費者目線になるが、バイク、パーツ、用品販売に置き換えて参考になるケースがあるので、ざっと参照しておくと良いだろう。例えば「ネットオークションで購入した場合は修理に応じない・・・」はユーザー側とメーカー側の認識の違いを表しており、バイクショップ側としては保証や修理の姿勢を再考させられる相談事例と言える。また、ネット販売ではないが、「車」のカテゴリーにも「3年経っても納車されなかったバイク」といった数件の相談事例があり、こちらも参考になるはずだ。

3.悪い評価を反面教師にして改善したい

 また、活用頻度が高いと思われるネットオークションの「評価」も、見方によってはトラブル対応の参考になる。例えばオートバイ車体」のカテゴリーの中から、1台いち台追っていくと、悪い評価が目立つ出品者が必ず見つかる。その内容を見てみると、出品者側の傲慢さや対応の悪さ、出品時の情報不足等を指摘されているケースが多い。当事者ではないので表面的なことしかつかめないが、それでも、これらのやり取りを反面教師として「ウチもこれに似たところがあるな・・・」と思えるところは自店の対応の改善に活かすことはできるはず。例えば、落札者から「カウルに致命的な割れがあり、詳しく説明に明記すべきだと思います。分かっていれば入札しなかった・・・」と悪い評価が入っているケースがあったが、「現状」や「ノークレーム」で済ませるのではなく、ある程度の説明は必要なのだ。

4.逆にマナーの悪い落札者に当たったケースも

逆に、取り引き上のマナーが悪い落札者に当たってしまったのだろうと思われるケースも見られる。明らかに「言いがかり」と見える例として、

【落札者】
『業者なら事故車を「新古車」とは言わないはず。見落としなら見る目がない。二度と取引しない』

【出品者】
『とても状態の良い車両で、何故「事故車」なのか? どの点で事故車と判断したのか教えていただきたい。極上車を格安で出ししたつもりなのでとても残念』

と、出品時の説明も問題なく、車両そのものも問題なさそうなのに悪い評価を入れられてしまっているケースがある。こちらの対応に不備がなくても、難癖をつけてくる場合があるので、いくらネット取り引きとはいえ、電話連絡や直接顔を見て話すのが重要になってくるのだ。

5.感覚のズレを感じたらより丁寧に

こうしたトラブルは、直接話さずメール等のみで対応することにも原因があるが、「感覚のズレ」によるところもある。それは世代間のズレだったり地域性によるズレだったりと様々。数多くのネット取り引きをしている方なら、メールの文面でも世代間のズレがあることを感じることができるはずだ。例えばメールの基本ができているかどうかや、ギャル語や馴れ馴れしい言葉使い等、文体そのものが商取引をする内容に相応しくない場合は「ズレている」と予測できる。そういったユーザーが相手だと、こちらの「当たり前」が通用しないケースが高いため、通常のユーザー以上に丁寧な対応、丁寧なメールの文体を心がけたいところだ。少々極端ではあるが、相手が小学生だと思って対応するくらいの心構えである。文字だけのネット取り引きの場合は、これくらいの気遣いをしてちょうど良いだろう。

6.気分を害さない丁寧な返信・対応

丁寧な対応例として、

【落札者】
『フロントから異音したので調べたところ、キャリパーのボルトが1本のみで、しかも緩んでいた。何度か携帯電話にご連絡を頂いていたが、打ち合わせ等で出られなかった。ブレーキは自分で直した』

【出品者】
『この度はボルト締めの件で多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。原因を調査しましたところ、フロントタイヤ、ブレーキパッド交換の際にボルトを一本締め忘れるという人為的ミスによるものでした。基本的な部分でのミスにより、多大なご迷惑とご不快の念をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。また、お客様のお手を煩わせる次第となりましたことを重ねてお詫び申し上げます。現在は点検内容、方法の見直しが完了し、このようなミスが二度とないよう、細心の注意を払う所存でございます。ご負担頂いたボルト代に関しては、直ちに全額お支払いさせて頂きますので、お手数ですが、返金用の口座をご連絡頂ければ幸いです』

と、とても丁寧な返信・対応をしている。第三者が読んでも、おそらく当事者が読んでも気分が悪くなることはない書き方である。

7.こちらのひと言でトラブルにしない

相手が理不尽なことを言ってくると、ついカッとなってしまうこともあるだろうが、しばらく時間を置き、どんな相手でも前述のような返信を心がけたいところである。ここで相手と同レベルまで下がり、口語調で「応戦」してしまったら、火に油を注ぐではないが、間違いなくネット上でのバトルになってしまう。ブログやSNSで経緯を公開される可能性もあるので(もちろん相手の都合の良い解釈で)、こちら側からの言葉ひとつでトラブルになることは避けたい。

8.文章力の向上に加え電話の多用も

以上のように、文字がメインのネット販売は、言葉の使い方や文章力が重要になってくる。商品説明文やメールのやりとり、トラブル時の連絡等、すべてが文字・文章となってくるため、自身が購入者側でやりとりした内容を参考にしたり、メールの書き方といったハウツーを見てみるのも良いだろう。また、自身が不得意であれば、上手なスタッフに任せてしまう方が得策である。あとは、電話連絡を多用するのも、トラブルの発生を抑えたり、トラブル解決の時間を節約できる方法のひとつである。せっかくネット販売で省力化を図っているのに、電話を多用するのは逆行しているようにも見えるが、声のトーンが伝わる点は何よりも勝る。また次の機会に商品説明文の書き方、メールの書き方等、ネット販売のトルブルを減らす文章について触れていきたい。

国民生活センターのHPより、相談事例と解決結果の一例

インターネットオークションで購入した場合は修理に応じないパソコンパーツメーカー

インターネットのオークションで個人から、販売後数ヶ月でまだ保証期間内のマザーボード(パソコンの部品のひとつ。基板)を購入した。組み立てたパソコンに取り付けたがうまく動かなかった。他のマザーボードでは問題がないので、このマザーボードに問題があることはほぼ特定できている。外国のメーカー製だが日本法人もあり、そこがサポートセンターを設置しているので、そのホームページをみたところ、修理依頼は電子メールで受け付けると言うことであった。そこで、「ネットオークションで買ったこと」「保証期間内だが、もしも輸送途中での不具合の発生と思われれば有償の修理でもかまわないこと」などを書いて電子メールを送った。数日間待っても返事がないため催促の電子メールを送ったところ、「販売店から直接購入した人にしか保証はしないし有償修理もしない」「個人間売買で買った人は正規ユーザーではないのでこれ以上の返事はしない」といったひどい内容の返事がきた。
 保証というものはその製品を持っている人に対してするものではないのか。また、ネットオークションで買ったものに対しては有償修理さえしないのは、これだけ中古市場が盛んになる中で問題ではないか。

アドバイス

 相談者が持っている保証書は、通常の家電等に付いている保証書と同種のもので、購入者の氏名等を書く欄と販売店の欄があり、「購入者欄」は空欄、「販売店欄」には販売店名と購入年月が書かれたシールが貼ってありました。
 メーカーの日本法人は、「保証はあくまでも販売店から直接購入した人に対してのものであり、製品についているものではない」「正規ユーザーではないので有償修理もしない」「修理をしたければ元の持ち主を通してメーカーに持ち込むこと」との主張をくずしませんでした。ただし、メーカーの言う「正規ユーザー」とは「保証書に書いてある名前の人」とのことなので、持っている保証書の空欄に相談者が自分の名前を自分で書き込んでしまえば、それで正規ユーザーとして扱われるという程度のものです(メーカーもこれを肯定)。
 たとえ、メーカーがどのような主張をしても、製造過程でのミスが原因である故障等、メーカーの責任が明らかなものについては、あくまでも修理等を要求することができます。しかし、今回のケースは、前の持ち主は問題なく使っていたことを相談者は確認しており、「製造過程でのミスが原因」とは言えなさそうです。メーカーの対応は問題ですが、法的に対応を求めることは難しいといわざるをえません。
 つまり、このメーカーに修理を依頼するためには、元の持ち主を通すか、保証書に自分で名前を勝手に書くか、ということになってしまいます。
 なお、「販売店から直接購入した人以外にはサポートしない」ことが購入者に知らされていないので、今後は保証書とホームページで表記するとの約束だけはなされました。

コメント&解説

 保証書は商品に付いているものか人(購入者)に付いているものなのか・・・・・このようなことを法的に考えなければならないケースはあまりありません。なぜなら「保証は製品に付いているものとして扱っている」(ある国内メーカー)、「そのようなことを法的に考えることはなく、当社の製品をお使いいただいている方を当社のお客様と考えている」(別の国内メーカー)との対応がとられるケースが多いからです。
 その上、今回は「あくまでも保証書にある無償修理を」、と求めたものではなく、「有償でもいいから」と言ったにもかかわらず、「正規ユーザーでない」と、修理だけではなくあらゆるサポートを拒まれたものです。これでは、中古市場で購入したものは壊れれば即廃棄せざるをえず、中古市場を否定することにもつながります。環境にもいいとは言えません。
 このようなメーカーもあるということは、今後商品を購入する際(とくに中古市場で購入する際)には、保証やアフターサービスについてのメーカーの姿勢も考えなくてはいけないということになります。「中古で買ったのなら修理に応じない」というメーカーの商品を選ぶか、「製品を使っている人は皆正規ユーザー」というメーカーの製品を選ぶか、消費者側の選択の目も求められているようです。

クレーマーに近い落札者に当たってしまった例

「ブログにアップするつもり」という点は、みんなにバラすからちゃんと対応しろという脅しに近いもの。また、ダメな出品者と思わせる書き方をしている点は幼稚で、こういったユーザーに当たることも想定した商品説明や対応を心がけたい。

【落札者】
外装ピカピカ!とあったが、タンクには数々の凹みと、塗装ハゲ。ヘッドからオイル漏れ。クラッチワイヤー調節不能など数え切れず。落札後追加料金で整備をお願いし、引き取りに行ったが、返送する羽目になった。ジャンク車両と記載すべきで、事実を隠すのはダメだと思う。修理工程・費用などもブログにアップするつもり。

【出品者】
自走はお勧めしないことや注意事項も全て説明し、同意書にも署名頂いた上で、自走で帰ったのではないか?

【落札者】
「好調! 外装ピカピカ!」と謳ったジャンク車両?(笑) 詐欺罪と言っても過言じゃない。同乗してくれた女性も車両には絶句でしたねー。まぁいいですけど。追加料金で点検整備お願いしましたが。これ無意味ですよ。素人以下の整備、または、やってないと言ってもおかしくないので整備代金は捨てたも同然です。頼むのは無駄遣いです。