TMAX530(SJ12J)に見るATモデルのこれから

モデルチェンジごとにスポーツ性を高めるTMAXシリーズ。1月には倒立フォークやLEDライトを装備して、よりスクーターの域を超えたモデルに進化した。このライバルとなるのはスクーターなのか、それとも他のモデルなのか? ATモデルのこれからを見てみる。

新型は”スクーター”とは呼べない領域に

2013年6月にフルモデルチェンジしたTMAX530(SJ12J)は、排気量を499ccから530ccへと拡大、最高出力は28kW(38PS)から35kW(48PS)へと大幅アップした。48PSという数値だけを見ると「何だ、大したことないじゃないか」というレベルだが、重量217kgはライバル車よりも圧倒的に軽く、パワーウェイトレシオは当然低く、スポーツ性能が高いことは誰にでも分かる。そこへきて、今回2015年1月発売のモデルチェンジである。スクーターにもかかわらず、というと語弊があるかもしれないが、何とφ41mmの倒立フォークが装着された。ラジアルマウント式キャリパー等もそうだが、単に”スクーター”とは呼べない充実装備である。

ヤマハの分類では「スポーツバイク」だ

実際、ヤマハの「スポーツバイク」「スクーター」「競技用モデル」という分類の中では「スポーツバイク」の方に掲載されており、MT-07やSR400に上下を挟まれている。そう、TMAX530はスポーツバイクなのである。Vベルト式の無段変速という部分的な構造を見れば、ジョグやビーノと同じ”スクーター”なのだが、総合的なキャラクターはスポーツバイクであり、
「加速は期待以上に良く、倒し込み時も素直で安定感があり、ハンドリングは最高! スクーターの域を超えたと言われる高い走行性性能は本当だと思います。購入して良い意味で裏切られました」(千葉県・Nさん・バイク歴24年)
と、実際のTMAXユーザーの感想からもスポーツ性の高さが伺える。

FIやアルミフレーム等、TMAXシリーズの変遷

 ここで、改めてTMAXの歴史を振り返ってみると、初代TMAX(SJ02J)が登場したのは平成13年・2001年(BDS呼称:T-MAX500)。インジェクション化されたSJ04Jは平成16年・2004年に登場(BDS呼称:T-MAX500-2)。アルミフレームとなり、かなり軽量化されたSJ08Jは平成20年・2008年に登場(BDS呼称:T-MAX500-3)。そして、冒頭に述べた2013年のTMAX530(SJ12J)へとつながっていく。細かい点では、ダブルディスク、ラジアルタイヤ、フォーク径の拡大等、スポーツバイクと同様の変更を重ね、グッドデザイン賞を受賞した流線型デザインから直線基調へと、ライバル車とは一線を画したアグレッシブな外観となっている。

初代は安値、台数が多いのはSJ08J

 6~7ヶ月間の集計期間で簡単に各型式の相場を見てみたい。SJ02Jは15~16万円台で、新車価格から約78%の下落。SJ04Jは23~24万円台で、新車価格から約70%の下落。SJ08Jは50~51万円台で、新車価格から約50%の下落となっている。530ccとなったSJ12Jは価格帯を形成する程の落札台数はなく、平均で73~74万円。ABSモデルで平均77~78万円といったところだ。意外なことに、最も台数が多いのは初期型ではなくSJ08Jで、これは販売期間も要因のひとつだろうが、アルミフレーム等の採用で一層魅力的になったからだろう。ちなみに、SJ04JとSJ08Jはこの数ヶ月軟調、SJ02Jは横ばいとなっている。

シルバーウイング600、スカイウェイブ650はライバル?

 TMAXのライバルは必然的にシルバーウイング600、スカイウェイブ650となってくる。仕方がない。いくらヤマハがスポーツバイクとうたっても、構造的にスクーターなのだから。しかし、シルバーウイング600とスカイウェイブ650とは方向性が異なるのは明白であり、この2モデルはスポーツ性よりもどちらかと言えば快適性を重視している。収納力もそうだ。ポイントは250ccクラスビッグスクーターと同様で、その大排気量版と言えばいいだろうか。TMAXのようにバンク角や前後重量配分はポイントに挙がってこない。ライバル車ではあるが、ライバル車としてまとめてはいけないのが、この3モデルなのかもしれない。

DCT搭載がスポーツモデルを変える

それでは、何がライバルとして挙げられるのかというと、ホンダのインテグラ(RC71)を初めとしたDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)搭載車だろう。2010年7月に初登場となったVFR1200Fデュアル・クラッチ・トランスミッションで世界初搭載となり、その後、数多くのモデルに搭載されている。マニュアルトランスミッションのように有段でありながら、シフト操作不要のオートマチックであるため、見た目はロードスポーツモデルながら、中身はスクーターに近いのである。スクーターベースにスポーツモデル寄りとしたTMAXとはアプローチは逆になるが、「スポーツ性を重視したオートマチック」という点で共通している。

インテグラはスクーターである

ロードスポーツであるNC700シリーズ、NC750シリーズをベースとしたインテグラ700(RC62)とインテグラ750(RC71)。NCシリーズはMTとDCTの両方が設定されているが、インテグラはDCTのみ。そのスタイリングはNCシリーズのフルカウルモデルではなく、まさにスクーターそのものである。しかし、車体や足回りはNCシリーズと共通のため、スクーターの走行性とは別物であることは容易に想像できる。やはり、TMAXの最大のライバルはインテグラであり、さらには、その他のDCT搭載モデルもターゲットになってくるかもしれない。少しさかのぼって、Vツインで無段変速のATを搭載したDN-01も視野に入ってくる。

無段変速のDN-01は割高感がある

DN-01は新車価格が123万9000円と高めだったこともあり、中古相場も69~70万円台中心とまだ落ちていない。インテグラ700(BDS呼称:NC700インテグラ)は50~51万円程度。インテグラ750は、まだ落札実績がない。77万円(税抜)の新車価格からすると、まだまだ割高感があるが、ちょうどSJ08Jと近い相場であり、この2車種が比較対象としては最適である。同様に、DN-01はSJ12Jと相場が近く、比べやすい。ただ、DN-01はどちらかと言えばアメリカン的な要素が強いATモデルであるため、スポーツ性を押したTMAXとは少々毛色が異なるかもしれない。それでも、ATという共通項を販売戦略にするのは有効なはずだ。

TMAXから派生モデルへ進化するか?

今後もスポーツ性を強めるに違いないTMAX530。例えば、スカイウェイブ650のように変速機能を装備したり、インテグラのように前後17インチホイールを採用してくると、ますます面白くなってくるに違いない。また、TMAX530ベースの派生モデル、例えばNC750Xのようなカテゴリーにとらわれないモデルが登場してもおかしくないだろう。そうなってくると、「ATスポーツ」なんていう新たなカテゴリーも生まれてくるかもしれない。AT限定の普通二輪を取得してビッグスクーターを乗り始めたライダーが、結局それっきりになっているケースも見聞きする。TMAXの進化がそういったライダーを呼び戻すきっかけになることを期待したいところだ。

TMAX530
TMAX530

マイナーチェンジでLEDヘッドライト等を装備したTMAX530。特筆すべきは倒立フォークの採用で、スクーターの域を超えている。

ヤマハ スポーツバイク
ヤマハ スポーツバイク

ヤマハのホームページでは「スクーター」ではなく「スポーツバイク」の中に掲載されているTMAX530。MT-09やMT-07と同列である。

TMAX500(SJ08J)
TMAX500(SJ08J)

台数が多いのはSJ02Jではなく、意外にもSJ08J(T-MAX500-3)。50~51万円台が中心で、インテグラ700(RC62)と近い相場。

インテグラ(RC62)
インテグラ(RC62)

NC700X・NC700Sベースのインテグラ(RC62)。ロードスポーツベースでスクーターに近付けたのはTMAXと逆のアプローチである。

デュアルクラッチトランスミッション
デュアルクラッチトランスミッション

写真は二輪で初搭載となったVFR1200Fの例。ATモードとMTモードが選択可能で、DCT搭載モデルがスクーターのライバルになるか?

DN-01
DN-01

「スポーツクルーザー」として登場したDN-01はロックアップ機構付油圧機械式無段変速機を搭載したATモデル。ATという点ではスクーターだが、ホンダではスポーツモデルの分類であり、TMAXの設定に近いものがある。

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